ダウ90000第3回本公演「ずっと正月」
どうもこんにちは。
5年後のバカリズムを見つけたと思った。
もうすぐ連ドラの脚本を書いたり、映画を撮ったりするんだろうと思ってワクワクした。
少し前のこと。
Mー1の予選動画のサムネイルに色物的なものを見つけた。
一人の男性を四人の女性が囲んでいるのだ。
パッとみて、あーこういう突飛さだけの人たちって毎年いるよな、と思いながら、ネタを見始めた。
ただ、わちゃわちゃしているだけの女性四人を一人の男性がツッコんでいくのかな、と思ってみていたら、これが見事な構成で驚いた。
センスのあるワードでわちゃわちゃをツッコみ、上手いこと四人の交通整備がされていく。結構なわちゃわちゃなのに、すっきりしている。
しかも、そのわちゃわちゃが後半のコント部分にしっかり効いている。わちゃわちゃの中の小さいくすぐりまでもが、しっかりと後半のコントで回収されていて、最後まで心地いい緊張感のあるネタだった。
突飛さだけの色物のようで、しっかりと作り込まれたネタ、そして、女子特有のわちゃわちゃを、あるあるネタの域を超えたリアリティで見せる四人の女性陣の演技力。その両方が相乗的にネタのクオリティを高めていた。こりゃすごいのがいるな、と思った。
彼らは「ダウ90000」と名乗っていた。
ダウ90000 漫才(M 1 2021 準々決勝ネタ) - YouTube
これは面白い人たちを見つけたな、まださほど知られていないし、青田買いかしら、なんて思っていたら、すぐにTBSラジオの月替わりパーソナリティを務めていた。
それでもそんなに露出が多いわけではなかった。
しばらくYouTubeでネタを観あさっていると、本公演と銘打った彼らの芝居が新宿で幕を開けるとのこと。
当日券を目当てに、ダメなら映画でも観て帰って来ればいいか、程度の気持ちでシアタートップスに赴いた。
当日、並んでみると当日券の抽選待ち一番乗りだった。受付をするスタッフさんたちの、こいつ気合い入ってんな、って目線(まぁ、被害妄想でしょうね)を尻目に一昨日の「東京ポッド許可局」を聴きながら、井上ひさしさんの「十二人の手紙 (中公文庫)」を再読していた。
その直前に、宿野かほるさんの「ルビンの壺が割れた(新潮文庫)」を読了したばかりで、この作品がフェイスブックのダイレクトメールのやりとりだけで展開される現代版の書簡体小説だった。久しぶりに書簡体小説を読んだので、この手の傑作をもう一度読みたくて、書斎の本棚から探してきたものだった。
閑話休題。
当日券をゲットしてから、開演まで、新宿に行く際に必ず立ち寄るジャズ喫茶「DUG」でコーヒーを飲む。期待が溢れる舞台を目前にしていたせいか、この日流れていた曲は荒々しいナンバーが多かったような気がする。
新宿角座から本多グループのシアタートップスになってから初めてのこの箱だった。
一番前の席に座って、ポップな客入れBGMを聞きながら、それはそれはワクワクしていた。
観終わってから、これは5年後のバカリズムを見つけたと思った。
もうすぐ連ドラの脚本を書いたり、映画を撮ったりするんだろうと思ってワクワクした。
ワードセンスの面白いと、状況設定面白いとが組み合わされたハイブリッドな畳み掛け、それがテンポ良く展開されて、終始笑っていられる。
しかもその展開のさせ方にも、パワーワードをこぎみよく重ねたり、膨らませたり、溜めて溜めて一発で爆発させたりと、色んなやり口を披露してくる。
これでかなり面白い。
だが、これが続くのだと、演劇というよりはシーンごとに連作コントを見せられてる感じがして、ダレてくるなぁ、と思っていたら、ちゃんとそれを大きくひっくり返す演劇的な展開も用意されていて、そこから先は各々八人の演技力をありありと見せつけてくる始末。
本もすごいが役者もすごい。
本公演が駅前劇場、スズナリ、そして、本多劇場となるのも時間の問題だ。
そうなれば、易々とチケットの取れる人たちじゃなくなるだろう。
これは本当に知名度があがる前に、今のうちだ。我が物顔でみんな教えて回ろうと思っていた。しかし、その帰り、早速、前作が岸田戯曲賞の候補作になっていた。
世に出るのが早い、早すぎる。
これでは私が青田買いを楽しむ暇もない。
とはいえ、白水社から発表された候補作の戯曲も読みものとして、とても面白かったのだから、仕方がない。電車で吹いてしまった。
では、こりゃまた失礼いたしました。