本、映画、演劇、美術、テレビドラマにラジオといろんな文化に触れたい好奇心。 コカコーラ片手にぱーぱーお喋りしています。しばらくおつきあいのほど願ってまいります。

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茅ヶ崎のゆとりがコカコーラ片手にラジオのような独り語り

KERA CROSS第一弾 「フローズンビーチ」(@シアタークリエ)

 

どうもこんばんは。

 

先日、日比谷のシアタークリエにて「フローズンビーチ」を観劇。

私の大好きな劇作家ケラリーノサンドロヴィッチさんの過去の戯曲に新たな演出家の元で違う形を与えようという企画、「KERA CROSS」の第一弾。岸田戯曲賞を受賞した「フローズンビーチ」を鈴木裕美さんが演出。

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まずもって、役者陣が良かった。

普段は稽古をしながら、ほぼ当て書きのように脚本を書くケラさん。私はそんなケラさんのスタイルから、初演のキャストが一番芝居を面白くするんだろうと思っていたので、ケラさん以外の演出家が初演のキャスト以外で打つこの企画自体をちょっと懐疑的にみていた。

 

それがだ、新しいキャストでもかなり面白かった。

特に今回が初舞台というブルゾンちえみさん。初演では犬山イヌコさんが演じた役。ちょっと思考の方向が斜め上で、思ったこと、感じたことに素直すぎるが故に行動にも突拍子のにところがある市子という難しい役だ。それを見事に演じ切ったブルゾンさん。初舞台の域をはるかに超えた大熱演。それも、犬山さんの踏襲でなく、新しい市子を見事に人物像から作りだし。サイコがかった発言に幾らかの愛嬌と説得力を持たせるのはすごく難しいことだ。

 

時代設定が1987年から8年ごとに3幕にまたがるため、話題の中にはバブル期を思わせるものや、昔懐かしいような時事的なセリフが随所に散りばめられている。しかし、今回の演出はあえてそのまま残したものであったが、当時のギャグがちゃんとおもしろく、特にブラックユーモアを笑わせる空気感が出来上がっていた。

「めくら」という今では差別用語と糾弾もされかねない言葉で笑わせ、オウム真理教に入信した千津をいじって笑わせる。

 

ブルゾンさんの熱演といい、ブラックユーモアといい、舞台上の演劇の完成度が客席の空気感までもを作り上げていた今回の作品。舞台から空気をつくことが何よりも難しい、いかに観客を舞台上の世界観に取り込み、同じ空気にするか。言い換えれば白けさせないか。

難しい台本を丁寧に読み込んだ故に出来上がったなんとも言えないあの空気は、今回の鈴木ひろみさん率いるカンパニーの大成功だった。素晴らしかった。

 

では、こりゃまた失礼いたしました。